1-3.成長と繁殖
サンゴの一生
サンゴは、種類や生息する環境にもよって成長速度は変わりますが、1年でおおよそ数cm~10cm以上成長します。
サンゴが増えていく方法にもいくつか種類があり、サンゴには
- 個体がクローンを作って群体を作る“分裂”するもの
- 産卵によって卵と精子が受精し、卵が新しい場所に固着して群体を作る“有性生殖”するもの
が存在します。
2番の有性生殖するサンゴの産卵はさらに2つのタイプに分けることができ、バンドルという精子と卵子が入ったカプセルを放出する「放卵放精型」とサンゴの中で受精させて幼生になったものを放出する「幼生保育型」になります。
サンゴの成長
受精したサンゴは、楕円形をしており大きさは1mm程度でこの状態を「プラヌラ幼生」といいます。プラヌラ幼生には繊毛が生えており、自ら遊泳することが出来ます。
種類によって遊泳期間は異なりますが約1~2週間程で岩などに固着後、数日で「ポリプ」と呼ばれる状態になります。ポリプになるとサンゴは自身のコピーをどんどん増やしていき、その後炭酸カルシウムで作られた骨格を形成します。そうして長い年月をかけ、親のようなサンゴになっていきます。
上記のような「有性生殖」による増え方の他に、サンゴは「無性生殖」という精子・卵子を使わない増え方も行う種類が存在します。成長したサンゴが波や生物が当たることによって折れ、その破片が岩などに固着してそのまま成長すると折れる前の大きさ程に成長します。
当館ではこの増え方を利用し、ススキムレヤギやミドリイシなどのサンゴの養殖・移植を行っています。
サンゴの産卵
産卵の時期は種類によって異なりますが、「放卵放精型」のほとんどのサンゴは年に1回しか産卵を行いません。季節による水温変化に合わせ、卵を成熟させ産卵に備え、多くの種が満月前後の夜を待って産卵を行います。
一方で「幼生保育型」は、少数派でありながらも周年を通じて毎月幼生の放出を行うという観察結果もあります。サンゴの産卵は方法も時期もサンゴの種類だけパターンが多様に存在します。
プラヌラ幼生がある場所に固着してポリプになり、サンゴとして成長したあともサンゴは分裂を繰り返して大きくなります。サンゴは自分にとってより条件の良い場所を選んで成長していきますが、基本的に移動をすることは出来ません。
それぞれが成長して大きくなっていく中で、近くに居るサンゴ同士の陰に隠れてしまったりぶつかってしまったりすることは、サンゴにとってかなりの障害となります。隣にいるサンゴに負けない為により強い毒性をもつサンゴは生存していくうえでより有利になり、逆に毒性の弱いサンゴは他のサンゴに触れたことでその毒性に負けて弱ってしまうということもあります。
また、サンゴは攻撃の手段を持っている種類も多く存在します。例として「スウィーパー触手」という長くて攻撃に特化した触手をもつ種類が存在します。「スウィーパー触手」をゆらゆらと長く伸ばし、近くにいるサンゴを毒で攻撃することで自分が生活していく上でより良い環境をつくる一種の武器とも言えます。
サンゴの白化減少
白化とは、サンゴが様々な要因で共生している藻類(褐虫藻)が死んでしまい、骨格が透けて見えることで色のあった体全体が白くなって見える現象のことを指します。白化直後のサンゴはまだ生きていますが、共生していた藻類が光合成を行えなくなることでサンゴ自身もエネルギーを得られなくなり死んでしまいます。
白化の主な要因としては、激しい水温差・光の強弱・紫外線量・海水の塩分量等が挙げられます。さらに現在は人間の活動(海洋汚染、沿岸開発、乱獲、森林伐採や農地開発による土砂流入、薬物流入)やサンゴを食べるとされるオニヒトデの大量発生、地球温暖化の影響で高水温となり起こった白化現象によって世界中のサンゴが数を減らしている危機的状況と言えます。
なお、沖縄県に毎年多く訪れる台風は災害を引き起こしたり、農作物等に影響を与える一方で、海をかき混ぜることにより海水の温度を下げる働きをします。逆に台風が来ないと海水温が高いままでサンゴが白化してしまうため、台風はサンゴにとって有効な気象現象とも言えます。
サンゴの死後
サンゴは柔らかい本体の部分の下に、石灰質でできた骨格を持っています。サンゴが死ぬと真っ白な石灰質の骨格の部分だけが残り、この骨の部分はもろく、弱くなります。そして、残った骨格が波の力などで長い時間をかけて粉々に砕けることで白い砂浜を形成しています。
砕けたサンゴの中には様々なバクテリアが棲息しています。
バクテリアには有害物質を無害化する働きがあり、潮の満ち引きの力で死んだサンゴの中に水が通過することで海の水が浄化されていきます。